本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

ウォータースライドをのぼれ/ドン・ウィンズロウ

元ストリードキッドの減らず口叩き探偵ニール・ケアリーシリーズ第4弾。実に6年ぶりの刊行らしい。またもや義父ジョー・グレアムがトラブルを運んで来るという幕開けだ。

レストランチェーンを持ち、ケーブルテレビ局で良質の家族向け番組を放送しているカップルの夫が、愛人のタイピストをレイプしたということでスキャンダルになっているが、その、田舎弁丸出しで下品なタイピストを裁判でも通用するような淑女にせよという、マイ・フェア・レディのような命令がニールに下されるのである。

ニールが所属する朋友会は銀行に附属する、顧客のためのトラブル処理機関だが、このケーブルテレビ局のNO.2と取引があり、経営者追い落としの策略が裏にはあるのだ。タイピストのポリーは、真っ直ぐな気性で、ニールのガールフレンドや、ケーブルテレビ局経営者の妻とも仲良くなってしまうあたりが笑える。この仮面夫婦は、テッド・タナーとジェーン・フォンダがモデルかと思ったが、解説ではクリントン夫妻としている。そう言われればそんな感じがしないでもない。どこまでも優等生な感じの妻である。

滑稽なマフィアやら凄腕の殺し屋やらアル中の探偵やらが飛び入りして、相変わらずのドタバタハードボイルドが展開されるが、どうも今まで比べて薄味のような気もする。楽しいことは楽しいが、カットバックを多用したことで、主人公ニールの必然性が薄れたような気がするのだ。でもまぁ、久しぶりにシリーズが読めて楽しかった。