本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

2010-05-01から1ヶ月間の記事一覧

カウハウス/小路幸也

主人公の畔木(くろき)は大企業で将来を嘱望されている若手社員だったが、不祥事を起こして鎌倉にある社有豪邸の管理人に飛ばされる。同棲している恋人を伴って赴任すると、なぜか我が物顔でテニスをしているひょうきんなじいさんと女子中学生がいて、邸宅…

実さえ花さえ/朝井まかて

園芸文化が隆盛を誇った江戸期の向嶋で、趣味の良い小さな苗物屋を営む信次とおりんの花師夫婦の春秋を描いた園芸時代小説である。花師とは、育苗や育種を専門とする職人で、いわば江戸のナーセリーであろう。江戸の園芸に興味がある植物好きには設定がたま…

偏屈と言うこと

我ながら偏屈であると思う。若い頃から友人に「お前は屈折している」と言われてきたし、テレビを見ていても何かと文句を言っているし、物の見方が確かにひねくれているような気がする。偏屈自体は悪いものではない。大多数の声に飲み込まれない他方面の判断…

チベット旅行記/河口慧海

黄檗宗の僧侶が明治三十年代に鎖国状態のチベットに密入国し、その見聞をつぶさに綴った冒険旅行記の現代語訳抄録である。河口慧海という名前は、秘境旅行家の先達としてアウトドア旅行記などで名前を見ることがあり、なんとなくは知っていた。チベットに入…

宵山万華鏡/森見登美彦

祇園祭の宵山を舞台にした連作的なファンタジー短編集で、登場人物や設定が少しずつ重なっている。最初の一篇は、お調子者の姉(小4)と心配性の妹(小3)が宵山にまぎれ込んではぐれ、妹が赤い浴衣の可愛らしい子供たちに連れ去れそうになるというホラー…

泣き虫弱虫諸葛孔明  第弐部 /酒見賢一

正史三国志と三国演義における矛盾に無茶なツッコミを入れつつ、劉備がいかにリーダーとしての資質を欠いているか、宇宙的変質者の孔明が魏呉を相手にいかなるいかさまマジックを使うかをスラップスティックに綴った三国志外伝の第二弾である。今回は荊州の…

病床の本

id:hebakudanさんの病みつきボイスの最後の録音に下記のような一節がある。 家から2冊だけ持って来ている本は、ヒルティの『眠られぬ夜のために』と、セネカの『人生の短さについて』。今日は無理をしてでもこれを少し読みたいと思っていたが、夕方から頭痛…

周到すぎるよ

id:heba様のエントリhttp://d.hatena.ne.jp/heba/20100511に下記のような一文がある。屁爆弾さんが血止め式に関する処理を依頼していった書置きについてである。 身内の者に宛てて妹が書き置いたメモ文書は、ディスクトップ・アイコンの姿でパソコンの立ち上…

辛い飴/田中啓文

ベテラントランペッター唐島英治が語り手となり、クインテットの面々が遭遇する謎や不思議をテナーサックス奏者の永見緋太郎が鮮やかに解いてみせるジャズ・ミステリ「落下する緑」に続くシリーズ第二弾。温厚で風格のある唐島に対し、音楽しか興味のない天…

さようなら

屁爆弾さんid:hebakudanとは元々mixiの読書コミュでご一緒させて頂き、彼女のmixi退会後は、ブログの(「本と屁爆弾」、その後「血止め式」)追っかけをしてお付き合い頂いていた。広範な読書量と該博な知識、そして鋭い考察にいろいろと蒙を啓かれたもので…

クッキーとWebビーコンについて

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ガール・ミーツ・ガール/誉田哲也

傲慢で生意気で傍若無人で奔放で一本気で純情で、強烈なオーラを放つ柏木夏美がバンド仲間の死の謎を追いかけた「疾風ガール」の続編である。頼りなくも誠実なマネージャー宮原の猛烈なアタックによって巨乳専門のフェイス・プロモーションでのデビューが決…