本・花・鳥(ほん・か・どり)

本とか植物とか野鳥とか音楽とか

2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ぼくのキャノン/池上永一

沖縄の風土や伝承をテーマにしてユーモアファンタジーを描く池上永一の作品が好きだ。「ぼくのキャノン」は当初タイトルからカメラエッセイかと思ってしまったが、今までの作品同様、やはり楽しく切ないファンタジーだった。本の雑誌の今年のベスト10にも…

無事、これ名馬/宇江佐真理

「頭、拙者を男にして下さい」。は組の頭・吉蔵のもとへ武家の子供・太郎左右衛門が弟子入り志願してくる。臆病者で覇気がない己を恥じてのことらしい。最初は面食らった吉蔵一家だが、子供の一途さが気に入り、一家で可愛がるように・・・。火消しの家族と…

啖呵こそ、わが稼業/語り坂田春夫 聞き書き塩野米松

香具師(テキ屋)の親分の聞き書きインタビュー。テキ屋、香具師というとお祭りの屋台というイメージがあるが、行商、見せ物、興業、縁起物の露店、占い易者と、さまざまな商売を包含していることが分かる。インチキな商品を巧みな口上で売りさばいたり、タ…

失踪日記/吾妻ひでお 

カルトな人気のあった漫画家が、仕事に行き詰まって二度のホームレス生活を送った日々を綴る実録マンガエッセイ。プライドもなく拾い物をして生活していたかと思うと、手配師にガス工事の下請け会社に送り込まれ、いつの間にかその道のプロになったりしてい…

石の猿/ジェフリー・ディーヴァー

元ニューヨーク市警科学捜査部長である四肢麻痺患者、リンカーン・ライムが活躍するシリーズの第四弾。ライムは有能な鑑識捜査官だったが、現場の事故で脊髄損傷し、ほとんど体の動かない状態。狷介で取っつきにくい男であるが、優秀な頭脳と悪を憎む心を有…

アラビアの夜の種族/古川日出男

古川日出男のSF大賞受賞作。二段組み569ページ、へとへとになる大冊だ(笑)。物語は三重になっている複雑な構造で、冒頭、この本はエジプトの伝説の英訳版をテキストに著者が和訳したものであるという前書きがあるが、恐らくここからが創作なんだろう。…

文学刑事サーズデイ・ネクスト1 ジェイン・エアを探せ!/ジャスパー・フォード

クリミア戦争が130年以上続いているバーチャルなイギリスを舞台にしたSFミステリで、文学刑事局の女性捜査官が主人公。主人公が所属するスペックオプス(特別捜査機関、略称SO)の中には、時間警備隊、吸血鬼・狼人間処分局などと並んで文学刑事局が…

街の灯/北村薫

戦前の東京を舞台にした連作ミステリで、富裕な家の活発なお嬢様探偵が活躍する。お嬢様付きの運転手として新たに雇われたのは武術の達人かつ妙齢の美女の別宮(べっく)という女性で、お嬢様の読んでいた小説の主人公に因んでベッキーさんと呼ばれることに…

瀬戸内の民俗誌/沖浦和光

瀬戸内海の海民の子孫である著者が、古代より卑賤視されてきた海民の歴史と実情を語る。家船を始め、隆慶一郎の諸作に登場するような「道々の輩」とも重なる非定住民の世界は、とても歴史的なロマンをかき立てられる。農耕のできないような狭い土地で漁をし…